Moleculeプロフィール: Jacob Heayes

Jacob Heayesの仕事は、史上最もクールなものかもしれません。Media Moleculeのキュレーションチームのメンバーである彼の仕事は、コミュニティがリリースした最高のドリームを一つ残らずプレイしたあと、それらをDreams Universe™のフロントページにまとめて、世界中のドリーマーが楽しめるようにすることです。今回はそのJacobにインタビューして、彼の原点である学生ジャーナリスト時代の話や、ドリームズ・ユニバースのステキなコンテンツをまとめる仕事の難しさについて語ってもらいました。

Jacob、今日はよろしくお願いします!Media Moleculeではどんな仕事をしていますか?

Jacob Heayes近影

Jacob Heayes近影

私はキュレーションチームに所属しています。一言に「キュレーション」といっても、その言葉にはさまざまな意味があって、ややこしい感じが出てしまいます。ですが、Media Moleculeのキュレーションチームの良さは、今までとはまったく違うタイプの新しい部門であり、とても新鮮なことだと思います。そしてそれは、このチームだけでなく、ゲーム業界全般にも言えることです。Dreams Universe™をリリースして1年半が経った頃、ここで作られている素晴らしい作品を分類する方法が必要だと分かってきて、Media Moleculeのキュレーションチームが生まれました。私たちは、並外れてユニークで面白い作品を見つけてスポットライトを当て、その作品にふさわしい注目を集めるように力を尽くしています。

私たちのチームはDreams Universe™を一日中プレイしているだけでお給料をもらっていると思われがちです。もちろん、作品をプレイしたときの楽しさを判断するプロセスでは、ゲームを遊ぶことがとても重要になるので、Dreams Universe™をプレイしているのは間違いありません。しかし、この仕事の醍醐味は、Dreams Universe™を普通に遊んでいるだけでは見つけられないような、思わぬ宝物を探し出すことにあるんです。

キュレーションはゲーム業界にとっても大事なことだと思いますか?

Jacobのハイライトの一つ。Impyアワード受賞作品「The Idyllium」のようなゲームにスポットライトを当てた

Jacobのハイライトの一つ。Impyアワード受賞作品「The Idyllium」のようなゲームにスポットライトを当てた

キュレーションの重要性はこの先どんどん増していくと思います。だからこそ、最先端のキュレーションチームで働くことには本当にやりがいを感じますね。今はユーザーが遊ぶと同時に、たくさんのコンテンツを生み出す時代です。そうした時代のデジタル空間では、創造性と自己表現が本当に重要になります。探し出す価値のあるものや、スポットライトを当てる価値のあるものを見極められる人が必要とされるようになるでしょう。そういう人がいれば、コンテンツの内容だけを楽しみたい人にとって、作品を探す労力が省けます。その一方で、懐かしのゲームを紹介したり庇護する動きも再燃しており、それも一種のキュレーションそのものです。Dreams Universe™のキュレーションでは、新作だけでなく、古い名作も紹介するようにしたいと思っています。

キュレーションとはどういう流れの作業なのか、軽く教えてもらえますか?特に面白い作品にハイライトを当てて、プレイヤーに楽しんでもらうにはどういった取り組みをするのでしょうか?

私は同僚のAlasdairと一緒にたくさんのコレクションを管理していて、時の経過とともにそこにどんどん作品を追加しています。そのたくさんのコレクションを、私たちはエバーグリーン コレクションと呼んでいます。例えば、2021年に始めたジャンル分け作業では、12種類のジャンルページをベースにした永久保存版プレイリストの作成に取り掛かりました。一日中、新しい作品をチェックし、面白いかどうかをプレイして確かめ、2人のどちらかが目を通して、ゲーム内のコレクションのひとつに加えることになります。

別のプレイリスト。ドリームズ・ユニバースでコメディ調のゲームにハイライトしたもの

別のプレイリスト。ドリームズ・ユニバースでコメディ調のゲームにハイライトしたもの

1年以上前から行っている取り組みとして、特定のテーマやゲームの種類に焦点をあてたプレイリストを毎週配信しています。これまでには、例えばタイムトライアルといったカテゴリーを作りました。このインタビューの時点で取り組んでいるのは、森や自然に焦点を当てた『Woods and Wildlife(森と動物)』ですね。

プレイヤーに作品を紹介する取り組みの一つに「週間まとめ」があり、ご自身もいくつか執筆していますね。やはり、面白いドリームを他の人に伝える過程も楽しいのでしょうか?

もちろんです。週間まとめは、そのときのドリームズ・ユニバースで輝いている作品を定期的にお知らせする方法として上手くいっていると思います。作品を面白くプレゼンテーションできる方法がないか目を光らせていますし、インプサイダーには他にない個性があるので、その力を借りることも忘れてはいけません。インプサイダーの記事で特に反響が大きかったのは、Jenが執筆したThe Backroomsの記事です。私たちはゲーム内でThe Backroomsをフィーチャーしたリミナル・スペースのコレクションや記事で取り上げられていた作品、その他のリミナル・スペースに関連したホラー作品を、Jenの記事とタイアップさせました。そういった作品を単なるプレイリスト内のゲームとしてではなく、編集部と協力して記事のテーマに合わせたコレクションとして発表したことが、大きな反響を呼びましたね。

「ジャンル別ドリーム」のプレイリスト。気になるジャンルの作品を見つけるのに役立ちます

「ジャンル別ドリーム」のプレイリスト。気になるジャンルの作品を見つけるのに役立ちます

ドリームサーフィンを仕事にしている人として、ドリームサーフィンでぜひ知っておきたい小ネタはありますか?

まず、しばらく前からフロントページの一番上にある「新着」プレイリストですが、実はここでは先ほどお話ししたエバーグリーン プレイリストの作品を常に集め、新しく追加したものから順番に紹介しています。つまり、プレイリストにある作品は最も新しいだけでなく、今まで誰も見たことがないようなものばかりなんです。ですので、Dreams Universe™を5分で詳しく知りたいなら、そのプレイリストを開いて最初に出てくるものを見てみるのがお勧めです。あとは「未プレイ」フィルターも便利で使いやすい機能ですね。

Jacobが取り組んでいた『ドリームホーム』キット。家や建築関連のアセットや家具がたくさん詰まっています

Jacobが取り組んでいた『ドリームホーム』キット。家や建築関連のアセットや家具がたくさん詰まっています

そして忘れてはいけないのが、私たちがこの数か月取り組んでいる「デイリー ドリームサーフィン」プレイリストです。これは、検索せずにプレイできる素晴らしい機能です。ここでは、5つの作品がドリームサーフィンのフロントページに平日日替わりで表示されますが、必ず未プレイ順で並ぶようになっているので、そのページにある作品は今までに見たことがないものばかりです。なので、普段フィルターやタグ、キーワードを使って細かく検索する人も、冒険してプレイリストをランダムに作る人も、細かく考えないでも新しい名作に出会えるようになりますよ。

便利な小ネタをありがとうございます!次は、ゲーム業界に入ったきっかけについて聞かせてください。この業界にはずっと昔から関わりたいと思っていたのでしょうか?

私は物心ついたときからゲームに熱中していました。ゲームは物語の作り方に他にはない面白さがあって、自然と心ひかれるようになったんだと思います。大学時代、私は大学新聞の編集担当として映画やテレビについてたくさんの記事を書いて、ぜひ見てほしい作品の情報をまとめたり、プレゼンテーションしたりしていました。でも、そうしているうちに、ゲームもスクリーンで楽しむコンテンツなのに、誰もその記事を書かないなと思うようになったんです。それがきっかけで、ゲームの回顧録や記事をもっと書こうと思い、『INSIDE』や『フィンチ家の奇妙な屋敷でおきたこと』といったゲームのストーリーテリングに関する特集を組むようになりました。『Her Story』や『Telling Lies』のデザイナー兼ライターであるSam Barlowへのインタビューも行いました。

Mmの配信でJacobが出演したシーン。『Coin Flip Champion』の紹介で、チームはコイントスの結果を7回連続で当てることに成功しました。次はロトの番号でお願いします

そうした経験から、自分はアート全般についての批評文を書くのが好きですが、その中でもゲームについて書くのが本当に楽しいんだと気付いたんです。その傍らで、Dreams Universe™もずっとやり込んでいました。Media Moleculeのゲームは過去作も含めて大ファンでしたが、マルチメディアでのストーリーテリングへの関心をさらに高めてくれたDreams Universe™は、私にとって本当にかけがえのないものだと思います。このゲームは、ゲーム、音楽、アニメーション、映画、スカルプチャーなど、あらゆる作品を同じパッケージソフトの中で制作できるエンジンです。その意味で、同じツールセットに誰もがアクセスできるようにすることで、誰でも作品作りに携われるというデモクラシーを実現しているんです。

それもあって、Mmが求人募集を出していることに気付いたとき、私にとってそれは最高の機会でした。ですが、その頃の自分は、コミュニティではどちらかというと見る側でした。空いた時間にいろいろと制作しましたが、あまり公開はしていなかったんです。ドリーマーの人たちが使っているツールや、そのツールがどのように進化しているのかに興味があって、ずっと検索しては眺めて楽しんでいました。それで、求人に応募する際には、ゲームと検索エンジンの仕組みについて、自分のゲーム歴を通して理解していることをアピールしました。それだけでなく、ジャーナリストとしての経験とゲーム全般へのはっきりとした情熱もかなり役立ちました。ですので、私の経歴は異色ですし、とても運に恵まれたと思っています。

あなたのようなキャリアに関心のある人に向けて、なにかアドバイスはありますか?

「タイムリミット」プレイリスト。タイムリミットのあるゲームや、時間をベースにしたシステムのあるドリームズ・ユニバースのゲームを紹介しています

「タイムリミット」プレイリスト。タイムリミットのあるゲームや、時間をベースにしたシステムのあるドリームズ・ユニバースのゲームを紹介しています

大事なのは、私がこの業界に入った道筋だと思います。自分のように、ゲームというアート形式が好きで、関わりたいけど方法がわからないという人にも、必ず道があるはずです。大事なのは、自分の得意分野を見つけること、そして、ゲーム業界に対する視点を本当に重要でユニークなものにしてくれる何かを見つけることです。私の場合、それはゲームについて書くことでした。他の人は、それがキュレーションだったり、芸術の制作だったり、プログラミングだったりするかもしれません。それが何であっても、得意分野を見つけて、自分の個性を表現し、夢への情熱について妥協しないことです。この業界には、そんな人たちの居場所がきっとあるはずですから。あとは、少しの運に恵まれるかどうかですね。キュレーションは新しい部門であり、5年前だったら私はMmに入っていなかったでしょう。ゲームというメディアは急速に進化していて、今後5年の間にどんな新しいポジションが生まれるかは分かりません。もしかしたら、そのポジションに選ばれるのは皆さんかもしれませんね。

Mmスタッフの机の上には、面白いものがたくさんあるようです。今のあなたの机には何がありますか?

面白い質問ですね。実は、Mmのオフィスに近いギルドフォードに引っ越したばかりなんです。なので、今の机には物は置いてありますが、ちょっと味気ない感じです。でも、一つだけ面白い物があって、幸運の小石を置いています。ドリームズ・ユニバースには小石を愛するとあるキャラクターがいますが、彼が生まれる前からずっと持っています。数年前にシャーウッドの森に行ったとき、母に「旅の思い出に拾って帰ったらどう?」と言われたので、小石を拾って持ち帰りました。今でもなくさずに、ギルドフォードまで持ってきました。旅行のことを思い出せるだけでなく、メガペンギンのおかげで特別な意味も持つようになって、まさにMedia Moleculeらしい小物になりましたね。でも、誰かにあげるつもりはないので、メガペンギンに盗まれないよう祈っています。

最後に、Dreams Universe™でお気に入りやお勧めの作品はありますか?

『RID:Memories of the Elders』、Camian&LordBruce作。バリエーション豊かな島、山、冒険の舞台となる大地が広がる世界

『RID:Memories of the Elders』、Camian&LordBruce作。バリエーション豊かな島、山、冒険の舞台となる大地が広がる世界

まさに私向けの質問なので面白いのですが、紹介したい作品が文字どおり何千個もあるので、かなり困りますね。間違いなく遊ぶ価値がある作品としては、CamianLordBruceが手掛けるRIDシリーズの一つ、『RID: Memories of the Elders』でしょうか。『アンチャーテッド』といったゲームの精神を受け継いだ、素晴らしいシネマティックアドベンチャーゲームである『RID』の1作目を知っている方は多いと思いますが、その続編となるこの新作も素晴らしいクオリティです。この作品は完全なオープンワールドアドベンチャーで、プレイ時間は20時間という、ドリームの中でもけた外れの長さを誇ります。また、ゲームを進めると多種多様なツールがアンロックされ、ワールドの移動方法やさまざまなパズルの解き方が変化します。さらに、この作品は2人の兄弟で完成させたという点も素晴らしく、Dreams Universe™の外で目にする超有名タイトルにも負けないくらい重厚な内容です。

Jacobお気に入りのドリーム『Alaska』(Dovahkiin_153作)。夕焼けに染まるアラスカの大自然の様子

Jacobお気に入りのドリーム『Alaska』(Dovahkiin_153作)。夕焼けに染まるアラスカの大自然の様子

もう一つ大プッシュしたいのが、Dovahkiin_153の『Alaska』です。私は1、2作品しか出していないクリエイターを探すのが大好きで、この作品のクリエイターもまだドリームを3つしかリリースしていません。ですが、強くお勧めしたい理由はそれだけでなく、作品のクオリティも素晴らしいからです。『Alaska』は『Firewatch』のようなゲームの精神を受け継いだ作品で、プレイヤーはハンターとなってアラスカの森で熊を追いかけるのですが、熊もまたプレイヤーを追いかけようとします。さまざまな仕掛けのあるフィールドを転々としながら追いつ追われつを楽しむゲームで、プレイ時間は30~45分ほどです。作品の憂鬱なトーンは『レヴェナント: 蘇えりし者』を思い起こさせますが、それは本当に他のドリームでは味わえませんし、景色もキレイです。

『A Deep Dive』、GrimPinata136作。クジラやサメといった水中の生き物が驚くほどのディテールで描かれ、ゆったりとしたアニメーションで表現されています

『A Deep Dive』、GrimPinata136作。クジラやサメといった水中の生き物が驚くほどのディテールで描かれ、ゆったりとしたアニメーションで表現されています

最後に、アニメーション作品のお勧めとして、名アニメーターであるGrimPinata136が手掛けた『A Deep Dive』を推したいと思います。深海ダイバーが海に潜りながら神秘的な世界に入り込み、そこで迷っているうちに、魔術的リアリズムの影響を強く受けた美しい海中の景色や生き物の数々を目にするという5分程度のアニメーションです。また、SaucelessOneが制作した素晴らしい映像と音楽も使われています。最近のお気に入り作品はこんなところです。ですが、ゲーム内のプレイリストには、他にも素晴らしい作品がたくさんあります。どの作品も、私とAlasdairがプレイして気に入ったものばかりですので、ぜひチェックしてみてくださいね。

Dreams Universe™のユーザーガイドはただいま作成中。これからプレイのヒントに関するコンテンツを増やしていく予定なのでチェックをお忘れなく!