Moleculeプロフィール:Martin Taylor

Martin Taylorはかなりアイコニックな人物です。Dreams Universe™でおなじみのアイコンをデザインしているからというだけではありません! Media MoleculeのシニアUIデザイナーとして、皆さんと私たちのゲームの関わり方をデザインし、ポジティブで合理的なプレイ体験を作り出しているのがMartinなのです。最近では、新たにクリエイティブ・ディレクターに就任したJohn Beechのアイデアによる、おもちゃの列車と子供の頃の思い出に焦点を当てたMm オリジナルの最新作Trenの優れたユーザーインターフェイスをデザインしました。でも彼の才能はUIにとどまらず、Webデザイナー、フリーのゲームレビュアー、GTAのMOD制作者としても活躍してきたとMartinはいいます。経歴を紹介するだけでかなりのボリュームになりそうな予感ですね。さっそく話を聞いてみましょう!

よろしく、Martin! Media Moleculeではどんな仕事をしていますか?

Martin Taylorの写真。

Martin Taylorの写真。

Media MoleculeでシニアUIデザイナーをしているMartinです。直近で手掛けたのは『Tren』のユーザーインターフェイスで、メインメニューやアイコン、グラフィックデザイン、ブランディングなど、ゲームプレイ以外のあらゆる要素をデザインしました。このプロジェクトを担当したのは私1人だったのでとても大変でしたが、この特別なゲームに携わることができて嬉しく思っています。

それ以前の仕事では、ドリームズ・ユニバースのUIをすべてデザインしました。コメントシステムやカバーページのようなソーシャル機能など、Dreams Universe™のフロントエンドと呼ばれるようなものをすべて作ったんです。それから、クリエイトモードで使用するアイコンセットの制作にも取り組みました。ゲーム内には1487個のアイコンが存在するので、大仕事でした。自分ですべて描いたわけではありませんが、かなりの部分を私が担当しました。最初はそんなに多くなるはずではなかったのですが、時間が経つにつれてどんどん必要なアイコンが増えてしまったんです。このゲームでの私の最大の仕事ですね。

Dreams Universe™でMartinが作ったアイコンの一部。

Dreams Universe™でMartinが作ったアイコンの一部。

その前はというと、もともとは『Tearaway』のwebデザイナーとしてMedia Moleculeに入ったんです。『Tearaway』がリリースされる3ヶ月ほど前にチームに入って、ゲームの公式サイトTearaway.me(新しいタブで開く),[編集注:このサイトの下の方にある「クラフトコード」欄に「"wassail rave"」と入力してみてください。お礼は後で構いませんよ!]のフォトポータルをデザインしました。以前はゲームニュースサイトのEurogamerでwebデザイナーをしていたので、明快な構造とシンプルなコンテンツのサイトをデザインすることには慣れていました。でも、Media Moleculeに入ってからは… いきなり「Instagramを作れ」と言われたような感じでした。

非常に困難な状況に放り込まれたわけですが、でも、その後はwebチームと一緒にさまざまなプロジェクトに携わる機会に恵まれました。そんな中で、当時はスタジオにUIデザイナーがいなかったので、私の仕事の重点は徐々にUIデザインに移っていったんです。Dreams Universe™のリリース後、多くの社内プロジェクト、Mmオリジナルやアップデートに携わってきましたが、『Tren』はその中でも段違いに大きなプロジェクトで、心から誇りに思える仕事ができました。

Martinによる制作過程の『Tren』のUIの一部。

Martinによる制作過程の『Tren』のUIの一部。

Dreams Universe™は巨大な創作ソフトウェアです。そのソーシャル機能のデザインにはどんなふうに取り組みましたか?

我々はwebチームなので当然といえば当然ですが、Dreams Universe™のソーシャル機能を作る時もweb屋の精神で、まるでソーシャルメディアのwebサイトを作るようなアプローチで挑みました。メインに考えたのは、「プレイヤーにどんな風にゲームと接してほしいか?」ということでした。indreams.meとゲームが、可能な限り同じ使い心地になるようにしたかったんです。本当に巨大なプロジェクトで、Dreams Universe™の発売直前まで、実に6年近くかかりました。その一環でDreams Universe™のシステムチームとも一緒に仕事をする機会がたくさんあり、とても多くのことを学べました。

Martinが携わったDreams Universe™の最新プロジェクト『Tren』のローンチトレーラー。

Media Molecule内の様々な部署の垣根を越えて仕事をしてきたとのことですが、チームを横断して仕事をする自由さは気に入っていますか?

もちろんです。よく、人は約5年周期で転職したくなるといいますが、スタジオ内にいながらにして多様なプロジェクトに携わる機会が得られるのは、間違いなくMedia Moleculeで働く利点の一つです。新しいことがしたくなっても、会社をやめる必要がないんです。Media Moleculeのような環境だと、定期的に新しいことに挑戦するチャンスが訪れるので、退屈することはありませんね。例えば、『Tren』での仕事は本当の意味でゲームのUIを作ることだったので、新鮮でワクワクしました。Dreams Universe™のUI制作は、ソーシャルメディアやwebサイトのUIをゲーム制作ソフトのUIに変換するような感覚でしたから。気合を入れて新しい仕事に取り組みました。Media Moleculeで働いている間に3回も転職したような気分で、最高です。

あなたから見て、優れたUIとはどのようなものですか?

MartinがDreams Universe™のためにデザインしたトロフィーアートの一部。どれも素晴らしいですが、私たちはELE-Dが大好き!

MartinがDreams Universe™のためにデザインしたトロフィーアートの一部。どれも素晴らしいですが、私たちはELE-Dが大好き!

Media Moleculeで働き始めた当初は、UIデザインは専門外だったんですけどね。でも、最近はUIやUX(ユーザーエクスペリエンス)のスペシャリストと呼ばれる人たちが、文字通りUXに触れるだけで、アートやデザインは一切やらないという話をよく耳にします。その点、私の仕事はもっと総合的で、プロセスのあらゆる部分に入り込むのが好きです。多くの場合、仕事は自分の直感を信じることから始めるのですが、幸いなことにMedia Moleculeでは優れたユーザーテストのデータをたくさん集めることができます。優れたUIデザインで最も重要なのは、人々がゲームにどのように接するかに基づいてデータを収集することだと思います。

もちろん、分かりやすいタイポグラフィや、ユーザーが最も使うものに最も手が届きやすい画面配置など、より一般的な「良いデザイン」の原則もありますが、ユーザーテストは重要な鍵です。『Tren』での仕事は示唆に富んでいて、人々がどんな風にゲームをプレイし、UIを使うか知るためにユーザーテストが不可欠で、そのデータはとても役立ちました。我々の「これが必要なんじゃないか」という推定が実証されることもあれば、「ぜひ使ってほしい、見てほしい」と思って画面上に置いたものに全く気付いてもらえないこともあるんです! これが最も重要なことで、プレイヤーの手に渡して試してみなければ、彼らがゲームの中で何をしようとしているのかを知ることはできないんです。

Media Moleculeで様々なプロジェクトに参加した中で、特筆すべきものは何ですか?

Martinが制作したコメントシステムの使用例。

Martinが制作したコメントシステムの使用例。

『Tren』は正直いって、私の最高傑作だと感じています。何年もここで学んできたノウハウの集大成ですから。Dreams Universe™の制作における私の仕事の多くは、とにかくやってみて試す感じだったんです。私だけでなく、我々みんなにとって、巨大な実験のようなプロジェクトでしたから。でも、そのDreams Universe™が完成してから、つけ加えていったことの多くは… 例えば、PlayStationのコメントスレッドシステムは変わった試みでしたが、いい仕事をしたと思ってます。ビジュアル的には派手ではないけれど、コミュニティとの交流という点では異例だし、かなり大胆なことをやりました。でも、『Tren』は私が長年にわたって学んできたすべての中で最高のものをつぎ込み、明確な目標を持って非常に濃いものを作ったという自負があります。そうした目標があったからこそ、何度も試行錯誤し、磨きをかけることができたんです。とても誇りに思っていますよ。長い時間をかけて制作できたのは幸運だったし、皆さんが楽しんでくれているといいなと思います。フロントエンドのUIだけでなく、クリエイション・キットに至るまで、私たちがこの作品につぎ込んだ努力と愛情が輝いていることを願っています。

同僚でコレクションのエキスパートであるCatherineと密接に協力して、『Tren』の世界と一体感のあるものを作りました。おもちゃ屋さんから家に帰ってきて、『Tren』の世界が詰め込まれた箱を開けて中を見るような気持ちになってほしかったんです。皆さんへのプレゼントみたいなものですね。パッケージはすべて本物のおもちゃのようにデザインしていて、大仕事になりましたが、同じ世界に存在すると感じてもらうために必要なことでした。Kevin Wattsが手掛けたチュートリアルの『プレイ&エディット』システムにもそれは言えて、すべてが1つの世界の中にまとまっています。とても野心的な試みで、だからこそ長い時間が必要でした。でも、その価値はあったと思います。

Media Moleculeの前はEurogamerで働いていたとのことですが、かなり環境の異なる職場だと思います。ゲームのwebサイトからゲームスタジオに移ってみてどうでしたか?

Martinが手掛けた、『Tren』キットのブランディングの一部。『Tren』カラーのティールブルーに目を奪われる。

Martinが手掛けた、『Tren』キットのブランディングの一部。『Tren』カラーのティールブルーに目を奪われる。

最初はなかなかの試練でしたが、間違いなく当時の私には必要な変化でした。1999年ごろに、趣味の延長でフリーランサーとしてEurogamerで記事を書き始めました。ひどいゲームのレビューを書いて50ポンド貰っていて、楽しいばかりではありませんでしたが、19歳か20歳だった私にとって、ゲームをプレイしてそれについて書くというのは人生でやりたいと思える唯一の仕事だったんです。そのうちフルタイムの専属ライターとして雇われましたが、すぐに自分には向いていないことに気づきました。私にとってレビューの執筆は、ゲームをプレイする楽しさを損なうものでした。ゲームのすべてを批評的に分析しなくてはいないので、楽しいと思えなくなってしまったんですね。大学ではグラフィックデザインを専攻していたので、その方向に進んでみることにして、結局は独学でwebデザインを学ぶことになりました。その後、小さなwebサイトの代理店で少し働きましたが、再びEurogamerとご縁があって、同社のwebサイトの拡大に合わせてまたそこで仕事をするようになりました。webサイトの成長を手伝って、ブランディングの一部にも携われたのはとても幸運だったと思います。それがきっかけで、さまざまなプロジェクトやチャンスを試せるようになりました。そのうちにEurogamerでできることの限界を感じ始め、居心地のいい場所から抜け出したい気持ちが出てきました。

運が良かったのは、Eurogamerでの仕事でMedia Moleculeのチームと関わったことがあって、いくつかの求人があると教えてもらえたんです。それで、Media Moleculeが求めていそうな仕事の実績をポートフォリオにまとめ、応募書類を送りました。きっと送ったwebサイトのソースコードも見られるとわかっていたので、ソースコードにミームを仕込んでおきました。ユーモアと自分のスタイルを表現できるし、Media Moleculeはその種のユーモアが得意ですから。その力の入った応募書類はMedia Moleculeの人たちにウケたと思っています。単なるこれまでの仕事のリストだけでなく、自分ならではの個性をたくさん盛り込んだのが良かったんでしょうね。本当にやりたい仕事に応募するときは、自分がそのスタジオにふさわしい人材であることをアピールするために、少し特別な努力をするのがおすすめですよ。何を作るにしても、じっくり考えて愛情を込めることが大事ですから、応募書類であっても面白いものを作ってみせることで、自分がその仕事に適任だと証明できるんです。

今の話は、次の質問にも答えてしまっていたかもしれませんね。UIデザイナーを目指す人に、何かアドバイスはありますか?

Martinが手掛けたwebサイトには、他に『Tearaway』ゲームのコンパニオンサイトTearaway.meもある。

Martinが手掛けたwebサイトには、他に『Tearaway』ゲームのコンパニオンサイトTearaway.meもある。

ネットで簡単に見つけられるコースやソフトウェアの話をしてもしょうがないので、まず、人々がどのように物事に接するかに対する生まれ持った好奇心が自分にあるかどうかを見極めて、その好奇心を育てることが大切だと思います。これはゲームに限りません。私自身、子供の頃から、標識やラベル、インフォグラフィックスなど、人々に何かを教えたり導いたりする様々な手段、中でも特にグラフィカルで見栄えのするものに興味がありました。私は空港の案内標識が大好きだったので、もしそういうものが面白いと思うのなら、それはいいスタートですよ! 次はその興味を、グラフィックデザイン、タイポグラフィ、色彩、レイアウト、動きの観点からの評価に結びつけてみましょう。

UIデザインが何なのかも知らない頃の話ですが、今の仕事への最初の一歩は、『グランド・セフト・オート』[1997]のMODコミュニティに参加したことでした。最初はファンサイトを作っていたのですが、MODシーンが盛り上がるにつれて、コードも書けないのに、我々プレイヤーが求めるツールに貢献したくなったんです。そこで、プログラマーに機能を説明するために、MODランチャーやスクリプトエディターのようなプログラムの仮のレイアウトを作って送っていました。このことは確実に私の頭に種をまき、それが今の仕事に導いてくれたと確信しています。ここで言いたいのは、何かを作ることが重要だということです! デザインしたり、相互作用を説明したりする練習をして、自分がそれを好きか、得意かを確かめましょう。

PS4のTearawayのテーマは私たちも大好き。これもMartinの作品です!

PS4のTearawayのテーマは私たちも大好き。これもMartinの作品です!

Media Moleculeのスタッフは、みんなデスクに面白いものを置いていますね。今、デスクには何を置いていますか?

コンピューター関連のもの以外だと、見ていて嬉しくなるようなちょっとした宝物をいくつか置いています。息子が赤ん坊のときに一緒に撮った写真、『ワイプアウト』のフェイザーの機体、『モンスターハンター』の猫が何匹か(1匹はフェイザーのカラーでお気に入り)、それからキットで作った小さな小さなプレイステーションの模型があります。本当に小さいんですよ! 『ワイプアウト』は大好きなゲームシリーズの一つですが、UIデザインとゲームデザイン全般の素晴らしいお手本でもあります。だから、『Tren』のデザインが『ワイプアウト』に影響を受けていることに気づいた人もいるかもしれませんね。けっこうわかりやすいので、よく見ると気づきますよ!

最後に、Dreams Universe™ゲームのお気に入りやオススメしたいものがあれば教えてください。

見事に再現された寺院の環境。Martinが『Golden Kingdom』のファンになった理由がここにある。

見事に再現された寺院の環境。Martinが『Golden Kingdom』のファンになった理由がここにある。

最近だとAmenjo1のスペースレースゲーム、COILがとても面白かったです。昔プレイしていた『Ballistics』というPCゲームに似ていて懐かしかったです。あまり上手くはないんですけどね。それから、廃墟の都市や洞窟を探検する体験も好きなので、Chris_Redwalker6Golden Kingdomもとても楽しめました。史上最も素晴らしいテーマパークの、高価で予測不能で最高なアトラクションに参加しているみたいでしたね。なので、当然Jungle Bill,も夢中になりました。滝の裏側に何かを隠すのも、探検の雰囲気も大好きです。

Toduはテキストガジェット研究所の廊下のデザインをアイコンで作り上げています。いくつわかりますか?

Toduはテキストガジェット研究所の廊下のデザインをアイコンで作り上げています。いくつわかりますか?

最後に、Toduの終わりなきDreams Universe™アイコンいじりについては紹介しておかないと後悔しそうです。特にText Gadget Laboratory"Text Gadegts/New Fleck" Cityは、Dreams Universe™のテキスト・ガジェットがどのように機能するか知っているつもりで全く知らなかったと教えてくれました。昨年は大規模なアイコン追加を行いましたが、UIのために特別にデザインされたアイコンを、実に奇妙な方法で使っている人たちを見ていると最高に楽しいですね。それから、Looking Through - A Visual Puzzle Game,もとても遊び心に溢れたアイテム探しパズルゲームです。Dreams Universe™には素晴らしいものがたくさんありますね。クリエイターたちが私が手がけたアイコンの奇妙で素晴らしい使い方を次々に見つけてくれるのを見るのは大好きです!

Dreams Universe™のユーザーガイドはただいま作成中。これからプレイのヒントに関するコンテンツを増やしていく予定なのでチェックをお忘れなく!