Moleculeプロフィール: Lisa Devon
Lisa Devonは、Media Moleculeの優秀なオーディオチームの一員として、Dreams Universe™での音楽体験を忘れられないものにするためにその素晴らしい音楽的才能を発揮しています。仕事の内容は多岐にわたり、ミキシングからマスタリングまで、そしてボイスレコーディングからボーカルディレクションまでこなし、実験的な要素もたくさん。ゲーム全体のオーディオデザインをゼロから作り上げるのは簡単なことではありませんが、Lisaはそのチャレンジを楽しんでいるようです。発声のウォーミングアップ、音楽制作に使える最高のテクノロジー、そしてDreams Universe™アーティストの中でお気に入りの作曲家について話してくれました。
よろしく、Lisa! Media Moleculeではどんな仕事をしていますか?
私はサウンドデザイナーです。これは、Media Moleculeでは、オーディオ制作のあらゆる段階での仕事をしているという意味になります。たとえば効果音の作成とゲームへの実装、楽器の作成、作曲、それにゲーム内の音楽システムを作るような、音楽の組み込み作業もやっています。ロジックを駆使し、チームの他のメンバーやゲーム開発に携わる他のチームとも協力しながら、プロジェクトの最初から最後まで、すべてのオーディオを扱うという、何でも屋のような仕事ですね。
オーディオ作成ツールの開発にも携わりましたか?
少しは。でも、私がDreams Universe™の制作に参加した頃にはもう、オーディオ関連の作成ツールは、ほぼ現在のような形に完成されていました。ただ、もちろん、その後微調整された部分や新規開発された部分はあります。私も機能面で改善や変更が必要な点について意見を言う機会があって、それらが実現されていくのは素晴らしい経験でした。それから、オーディオプログラマーとも緊密に連携しながら、今聴いている楽しい曲や、ゲームにぴったりだと思う曲、ぜひ追加してほしい機能などを話し合っています。そのために常に連絡を取り合うようにしています。
Media Moleculeでの仕事で、一番気に入っているのはどれですか?
うわ、難しい質問ですね。「一番」ですか? 自分で作ったものは全部自分の子どもみたいで、どれも同じぐらい好きだから難しいです。Ancient Dangers: A Bat's Taleの仕事は初の完全なソロプロジェクトだったので、とても思い入れがあります。1人でほぼ全てのオーディオを制作し、開発終盤のカットシーンの制作は他の人にも手伝ってもらいました。それにしても、ミュージシャンや声優との共同作業、音声のディレクション、制作のディレクションなど、キャラクターやゲームプレイシステムに関わる「すべて」の作業をして、ひとつにまとめることは途方もない仕事でした。1本のゲームを最初から最後まで作るようなものでしたから。なので、一番胸を張って紹介できるのはこのプロジェクトですね。
プロのミュージシャンと一緒に仕事をするのは楽しそうですね。外部のプロフェッショナルとの仕事はどんな感じですか?
本当に最高です。大抵は音楽業界ですでに繋がりのある知り合いにレコーディングをお願いするんです。友達と一緒に仕事をするのは楽しいに決まってますよね。私は作曲家としての己の限界を知るのはとても大事なことだと思っています。たとえば、バーチャルな楽器を使って素晴らしいエレキギターのサウンドを作ることは私にはできないので、そういう時はそれができる誰かに電話して「ねえ、あなたギタリストでしょ。この仕事どう?」って言うべきなんです。コードやメロディ、曲の基本構造を彼らに渡して、出来上がってきたものを聴くのは本当に刺激的な体験です。私には絶対に作れない、素敵なものを作ってくれますから。
それに、その道のプロと一緒に仕事をして、自分の仕事に結びつけていくという共同作業は大好きです。『Ancient Dangers』での声優さんたちとの仕事は最高に楽しかったです。みんなめちゃくちゃふざけてるのに、すごく真剣なセッションだったんですよ。それから、モンスターのボイスコレクションの制作でデスメタルのシンガーにディレクションするのも、とても楽しい仕事でした。
プロのみなさんは、声帯から出る音だけで信じられないような表現をしますよね。
そうですね。しかも、それで喉が潰れないところが、彼らのスキルの高さを証明しています。声が出なくなってしまわないように、喉をメンテナンスするための色々な道具やテクニック、ウォーミングアップ方法を持ってるんです。私にとっては、それが何よりすごいと思います。毎日欠かさずそうやってメンテナンスして、夜にはバンドと歌って。もし私がそんなことをしたら、絶対に声を枯らしてしまうでしょうね。
覚えているウォーミングアップ方法はありますか?
(この取材の)数週間前に、ボイススタジオでディレクターをやっているSebastienと一緒に配信をしたのですが、その時にいくつかのテクニックを教えてもらいました。音階練習や横隔膜を動かす呼吸トレーニングなど、歌手のボイストレーニングに似たものが多かったです。そうやって声帯にあまり負担をかけずに最大限のパフォーマンスを引き出すそうです。彼のその説明ではイメージしにくいですが、明らかに効果がありますし、他にもたくさんのウォーミングアップ方法を知ってると思います。本当に目から鱗が落ちるような話でした。
とはいえ、ご自身もミュージシャンなんですよね? どんな楽器を演奏するんですか?
子供の頃はずっとクラシックピアノを弾いていました。10年ほどピアノを弾いて、それから数年はギター。あとは、管楽器もいくつか習いました。何でもやってみるのが好きなんです。だって、どの楽器が自分に合うか分かりませんから。ただ、打楽器だけは苦手です。生まれつきリズム感がないみたいです。リズムの問題を解決できるかもしれないので、ドラムは一度きちんと学んでみたいです。それから、しばらくの間歌唱も習っていたのですが、これもまたコーチングを受けてみたいですね。声は間違いなく、時間をかけて練習し、育てる必要のある楽器ですから。
どうしてゲーム業界に入ったんですか? クラシックピアノを弾いていたあなたが、ゲーム音楽を作るようになったきっかけは?
15歳くらいのとき、それまでやっていた楽器はもうカッコ悪いと思って、テクノやエレクトロニック・ミュージックを作りたくなったんです。そんな時に父がPro Toolsをくれたんです。人生最高のクリスマスプレゼントでした。音楽制作に詳しくないとよくわからないかもしれませんが、Pro Toolsはとても評価の高いオーディオ編集ソフトウェアです。私がクラシックピアノで曲を作って歌っているのを見て、そのソフトをプレゼントしたらエンジニアリングにも興味が湧くんじゃないかと思ったみたいです(心配かけてごめん、お父さん!)。確かに興味は持ったのですが、結局その道に進むところまでは行きませんでした。とにかく、そのソフトウェアの使い方を学び始めて、音楽のレコーディングのほうにのめり込んでいきました。
そっちのほうが演奏より好きだと気づいたんです。それで、無料で通える地元のコミュニティカレッジでレコーディングやサウンドエンジニアリングの授業を受け始めて、そこから徐々に本格的な音楽制作の授業も受けるようになり、さらには音楽理論やオーディオの基礎も学びました。最終的には大学に編入してクラシックのオーディオエンジニアリングのコースでバンド演奏のレコーディングやマイクの技術、オーディオ制作を学び、学位を取りました。
残念ながら、私が住んでいたサンフランシスコでは、音楽シーンがかつての活気を失っていました。音楽関係の仕事は映画や広告の音声編集など、ポストプロダクションの仕事ばかりだったんです。それで、市内のいくつかのポストプロダクションスタジオで数年間働き、仕事は好きでしたが、次のステップに進みたいと思うようになりました。それに、ゲームにはずっと魅力を感じてたんです。決められたタイミングで一度だけいい感じに聞こえればいい映画と違って、双方向性があり、さまざまなプレイスタイルや環境に対応するためのミキシングが必要だからです。
友達がエディンバラの学校でゲーム分野のサウンドデザインコースに通っていたので、私もそこに入ることにしたんです。外国に移住して自国とは違う生活を体験する口実が欲しかったというのもあります。そのコースはとても素晴らしくて、修了とほぼ同時にMedia Moleculeで働けることになりました。
どうやって自分の音楽スキルをゲームの世界に移行させていったんですか?
Dreams Universe™ではとても簡単でした。多くのツールが、オーディオ編集ソフトで使っているものによく似ていたので。Dreams Universe™の開発初期は、たとえばモーションコントローラーと連動させるなど、オーディオツールをもっと専門性が低くて直感的に使えるものにしようとしていたようです。でも、試行錯誤を繰り返すうちに、より多くの機能と柔軟性、そしてリアルタイムでの再生、編集、反復が求められるようになり、最終的には私が普段オーディオ制作に使っているDAW(デジタル・オーディオ・ワークステーション)に近づいていきました。そして現在のDreams Universe™は、両方の分野においてとても優れたツールになっています。作曲や演奏もできるし、細部まで調整できる。だから、コンピュータやDAWで使っていたスキルをDreams Universe™に移行させるのはとても簡単なことだったんです。正直言って、大変だったのはワイヤレスコントローラーの使い方に慣れること、ゲームの操作を覚えること、そしてショートカットを使いこなすことでした。
オーディオデザインの仕事がしたい人にアドバイスはありますか?
ちょっと物議を醸しそうな言い方ですが、エディンバラでの学生生活はとても楽しかったものの、私がそこで学んだことはすべてオンラインでも学べると思っています。ただ、大学のコースに一つ利点があるとすれば、制作するものに提出期限が定められているので、やり遂げるためのモチベーションを維持できることです。私自身、そういうモチベーションが絶対に必要なタイプで、締め切りや成績などの目標がなければプロジェクトを終わらせることができないんです。
世の中には素晴らしいソフトウェアが色々あるので、使ってみるといいですよ。最も人気があるのはWwiseとFMODの2つで、どちらも無料でダウンロードできます。これらのソフトの使い方を学ぶためにとても役立つ無料のリソースも、オンラインでたくさん提供されています。まったくの初心者のゲーム業界志望者や学生には、Limit Break(新しいタブで開く)というメンタープログラムが役立つかもしれません。私も講師としてゲーム業界を志望する人たちを指導しています。作ったものを送ってもらったら、それを講評してフィードバックを返すんです。定期的にミーティングも開かれていて、そこではすでに業界でプロとして活躍している人たちに自分の作品を聴いてもらうことができるので、素晴らしい機会になりますよ。
Media Moleculeのスタッフは、みんなデスクに面白いものを置いていますね。今、デスクには何を置いていますか?
実は、今仕事をしているこの部屋は、ギルフォードの他のサウンドエンジニアから借りてるんです。本来のオフィスが改装中なので。デスクの上には、彼の素晴らしい機材がたくさん置いてありますよ。こっちには音楽のミックスやマスタリングに使う高級ハードウェアがあるし、こっちにあるのはThermionic Cultureというイギリスのブランドの最高にクールなバルブコンプレッサーです。作曲した音楽のミックスの仕上げに使うかっこいい機材だらけで、宇宙船の操縦席みたい。今のデスクの上はそんな感じですね。
でも、普段のオフィスのデスクに置いているお気に入りのものは、同僚でテクニカルディレクターのDave Smithがくれた手編みのタコです。すごくかわいいんですよ。彼は編み物がとても上手なんです。Daveについて、みんなが知らない意外な一面じゃないでしょうか?
最後に、Dreams Universe™ゲームのお気に入りやおすすめしたいものがあれば教えてください。
surrounded_のPurgatory Panic というゲームがあって、これが最高にかっこいいリズムゲームなんです。スタイルが本当に好きです。2Dに近い平面的なアートワークで、「ワイプアウト」のようなレトロな雰囲気があって。リズムゲームとしては、これまでに見たことのない、とてもよく考えられたインターフェイスだと思います。まさにDreams Universe™の真骨頂という感じで、ゲームから感じられる創意工夫と創造性がとても素晴らしいと思っています。
音楽で言えば、venwaveのようなアーティストが作ったものが大好きです。Dreams Universe™でできることの限界を押し広げたり、他の人がやらないことに挑戦したりする人たちが大好きなんです。もう1人、ghostfruit64も素晴らしいアーティストです。この2人がDreams Universe™で作っている作品は、音楽もゲームも両方とても素晴らしいですよ。私は彼らの大ファンなんです。Dreams Universe™には素晴らしい音楽がたくさんあるので、いつだって聴くべきものを見つけられるはずです。
Dreams Universe™のユーザーガイドはただいま作成中。これからプレイのヒントに関するコンテンツを増やしていく予定なのでチェックをお忘れなく!