Moleculeプロフィール: Charlotte Woolley
Charlotte WoolleyはMedia Moleculeの有能なQA(品質保証)チームの一員です。役割を一言で言えば、ゲームを壊して開発チームが修正方法を見つけられるようにすること。それでは、ドリームズ・ユニバースの探偵でいること、バグの悪用、破壊テストについて話を聞いてみましょう。
よろしく、Charlotte! Media Moleculeではどんな仕事をしていますか?
私はMedia Moleculeのシニアテスターです。QAチームはいくつかのグループに分かれてDreams Universe™を支えていて、私はテストを担当しています。取り組み始めてから… うわ、もう3年も経ってますね。テスト対象はクリエイトモードとMm制作のコンテンツ以外のほぼ全部で、そういったパーツをつなぎ合わせる細かくて厄介な部分すべてということになります。Dreams Universe™って全部が結びついているので、テストも難しいんですよ。何をしていても、ドリームズ・ユニバースに入り込むクリエイトモードのパーツがあったり、その逆もあったりしますから。でも、私がテストするものについて言うと、メニューの挙動、作品の公開方法、アクセス方法に関してはドリームズ・ユニバースの中で分離されています。
テストのどこが一番好きですか?
物事の明確さにこだわるタイプなので、ドリームズ・ユニバースのテストが大好きです。クリエイトモードで問題が起きた場合、それを引き起こしたと思われる原因は無数にあります。でもドリームズ・ユニバースで何かがうまく機能しない場合は、問題の把握からその原因の調査までの流れがもっと効率化されているんです。と言っても、難題に出くわしたら、それも楽しんで対応しますけど。探偵になって状況を調査するのも、テスターの仕事の中で気に入ってる部分なんです。一番やりがいを感じるのはそういった作業か、もしくは頭の中でシナリオを考えて実際はどうなのか試してみることですね。
バグや問題が持ち込まれるまで待機するほうがいいですか? それともプレイしてバグを発生させるほうがいいですか?
ここ1、2年はアップデート対応と待機が混在しています。言わずもがなですが、ここ1、2年、ドリームズ・ユニバースには過去最大級のボリュームとなった「ドリームメイキング」のテンプレート込みのアップデートを含め、たくさんのアップデートが行われていますよね。そのテストの多くは、どういったシナリオでテストすべきかを把握し、できるかぎり多くをプレイすることでした。その一方で、なんらかの事象が発生したり、問題が持ち込まれたりしたときには、それに集中して取り組まなくてはなりません。
QAに携わることになった経緯を教えてください。
双子のCatherine (同じくMmで勤務中)と私はずっとゲームが大好きでした。Catherineはゲームの学位を修めたんですが、私は編集が好きだったので映画の学位だと決めていました。自分の課程も楽しかったんですけど、Catherineの学科には、のんびりしていて、ゲームに関心があり、私の話をわかってくれるタイプの人たちが揃っていました。おかげで大学を卒業した時には、何をしたいかはわからないけど、とにかくゲーム業界で働きたいという妙な状態になってしまっていたんです。そこで、まずはどういった方法ならゲーム業界に入れるかを調べることから始めました。最初に参入手段として考えていたのは制作です。
実を言うと、QAはまったく頭にありませんでした。引っ越した先の街にあるテスト会社で知り合いが働いてるっていう連絡を叔母からもらって、初めて「その手があった」って気づいたんです。叔母も調べてみたらって思ったみたいですね。奇遇にもその会社がMedia Moleculeのゲームを扱っていたので、無事就職したあとに最初に取り組んだのが『リトルビッグプラネット™2』のテストでした。たくさん質問をしたからか、いいバグを見つけたからかはわかりませんけど、数ヶ月後には完全にチームに組み込まれてMoleculeのオフィスで働いていました。そこには1年ぐらいいて、たくさんの素晴らしい人たちと働くことができました。2010年の話ですが、テストの仕事を始めてすぐ、「これは一生ものの仕事だ」って実感しましたよ。もう12年になりますが、いまだにいいバグを発見すると脳内のセロトニン濃度が爆上がりします。
と言っても、そのオフィスはMmのゲームのテストだけを手掛けていたわけではないので、他のこともたくさんやりました。今やっている仕事の求人広告が出た時は怖気づいてしまったことをよく覚えています。Dreams Universe™はLBP(リトルビッグプラネット)よりずっと規模が大きいので、経験があるといってもテストできる能力があるかどうかまではわからなかったんです。Dreams Universe™の仕事を始めたときは、LBPと比較すると、展開されていたクリエイトモードの一部の仕組みを理解するのが大変でした。でも、その後ドリームズ・ユニバースで足がかりをつかんだら… そうですね、その空間が好きになりました。
発見したバグの中で思い出深いものはありますか?
一番記憶に残っているのは、『リトルビッグプラネット™2』のフレームレートバグです。これは私が旧式の技術を好きだったから見つけられたんですよ。LBP2はPS3対応でした。PS3のゲームを作るときは、昔のブラウン管テレビと480pという画質に対応させる必要があります。だから必ずそのテストをしないといけないんです。他のみんながフラットスクリーンのテレビでも、誰かはブラウン管でテストしないといけない。それで私が立候補したんです。レトロゲームが好きなので。
言うまでもなく、LBP2の目玉のひとつはマルチプレイヤークリエイションでした。何日も続けてセッションを行っていろいろ作ってみて、他のプレイヤーが作っているものに接触したらどうなるのかを確認していました。違うバージョンのフレームレートに影響するバグを発見したんですが、長い間何が悪いのか割り出せませんでした。実はそれは私がブラウン管のテレビを使う横で、他のテスターが液晶ディスプレイを使い、異なるリフレッシュレートで作業していたからだったんです。フォーマットと解像度が違ってリフレッシュレートが同じではなくなった結果、同期が取れなくなってしまっていました。あれはひどいバグでした。あのままリリースされていたらと思うと… 当時どれぐらいのPS3ユーザーが旧式のブラウン管テレビを使っていたかは知りませんが、多少はいたはずですからね。旧式のテクノロジーを使ってバグを特定したなんて、一番素敵な出来事だったんじゃないかと思います。
QAの仕事がしたい人にアドバイスはありますか?
個人的には、QAの世界では強い思いがすごく重要だと言いたいです。QAを大好きか、大嫌いかのどちらかですね。ゲームの仕事におけるマーマイト(訳注:イギリス発祥の発酵食品。独特の味と香りがする)みたいなもので、生まれながらのQAとも言うべき素晴らしい人たちと何年も働いてきました。思うに、ゲームがとても下手な人はQAがうまくなるような気がします。自分自身も壊滅的に下手で、難しいから全部イージーモードでやってたぐらいなんです。チームに同様のメンバーがもう1人いて、「ゲームがド下手なの」って言うので、こう答えたんです。「大丈夫、下手なら最高のバグを見つけられる。何度もステージを失敗したときや、ゲームが中断されたときに何が起きるかを見ることになるから」って。
あとは、ネットでバグ報告のテンプレートを探すのもいいですね。バグのテンプレートはテスターの仕事の大きな部分を占めていますし、不具合について書く時の説明の仕方を知っておくのは重要ですから。それと、いろいろなタイプのテストについての知識も大事ですね。たとえば指定されたことを行ってちゃんと機能するかを確かめる確認テストとか。他には滅茶苦茶にぶち壊すようなことをしてもボタンが正常に機能するかどうか、ボタンを20回押したときに妙なことが起きないかどうかといったことを確かめる破壊テストもあります。
マルチプレイ向けゲームでは、負荷テストがうまくいっているかを実際に確認するためによくオープンベータが行われます。そういったものには参加しやすいですよね。ネット上にはバグを発見するたびに報酬を出す会社もあります。以前一緒に働いた人の中には、副業としてそれをやってすごくうまくいってた人もいました。外注のテストを請け負う会社が見つけられれば、スタート地点にはすごくいいです。今一緒に働いている人たちの半数は、他社のテストを請け負う会社から始めています。経験を積むのにも最適ですしね。
QAテスターとしては、エクスプロイト(不具合を利用すること)を使うタイムアタッカーをどう思いますか?
Dreams Universe™の場合、私はきちんと計画されたテストを徹底して行って、たくさんバグを見つけるのが好きです。だから、「何か妙なものを見つけたらバグとして上げて」っていうスタンスです。でも、タイムアタックに関しては考えたこともありませんでした。ということは、過去に私が頑張ってデータベースに載せて修正しようとしていたバグの数々は、未来のタイムアタッカーの裏技になり得たということですね。でも私はエクスプロイトは全部バグ扱いでもいいと思います。プレイヤーのために優先すべきなのは、クラッシュの可能性を減らすことですから。
これは言っておく価値があると思うんですけど、QAに入ったら、タイムアタッカーになれるかもしれませんよ。実際、うちのテスターのChloeはAncient Dangers: A Bat's Taleの最速記録保持者なんです。一番すごいのは、『リトルビッグプラネット™2』ではないでしょうか。もう1人のMedia Moleculeのテスター、Markが2時間というとんでもない速さでキャンペーンをクリアしたんです。そういうことができる人たちのことは、いつも本当にすごいと思ってます。さっきも言いましたが、ゲームが下手なので絶対に真似できません。比較的のんびりしていて一定のペースで動く私のような人間はエクスプロイトを見つけられても、それをタイムアタックに利用することはありません。利用できるほど素早くなれないですから。
Media Moleculeのスタッフは、みんなデスクに面白いものを置いていますね。今、デスクには何を置いていますか?
すごくたくさん置いてますよ。モチモチしたオモチャのコクーンと『Bugsnax』に登場するバンガーとか、ハロウィン・ウーキーとか、このお気に入りの笑ってるブロッコリーとか。グローグーもいますね。後ろにあるのは『クラッシュ・バンディクー』のコントローラーホルダーで、Mmで働き始めて数日後に貰った小さいテレビを持っています。中にイエローヘッドを入れてくれてたんですけど、すごくかわいいですよね。イエローヘッドはリビッツの初期バージョンです。Mmの過去を思い返すのにいいですね。おやつも常備してます。柿、フルーツとナッツのミックス、ポテトチップ… デスクが勝手にこうなるんです… 私のために。
最後に、Dreams Universe™ゲームのお気に入りやオススメしたいものがあれば教えてください。
最近、特に気に入ってるのはCFulljamesとKaTMalenjamzによるgoth egg | slip and fallですね。皆さんも絶対に見たほうがいいですよ。ミュージックビデオのアイデアとしてこれほど奇妙で優れたものはなかなかないです。あとは、Mmの作品ではありますが、『オールハロウズ:失われた夢の国』も、先日のリリース時にプレイしたら本当に楽しかったです。最後まで一気にプレイしちゃいました。大好きな作品です。
少し前のものだと、REAL STUPID HUMAN PHRASE…がすごく楽しめました。制作者はTRIX9、KeldBjones、SoundsLikeTreble、Joeycutts83の4人です。これはDreams Universe™のシステムを利用した、笑える事実が盛り込まれた架空のクイズショーです。本当だとはとても思えないようなバカげた事実がたくさんあるんですよ。Dreams Universe™の作品を見つけるのに最適だったので以前はよくTwitterを使っていたんですが、『REAL HUMAN STUPID PHRASE』を見つけた時は、「カッコいい! “後でプレイする”リストに入れなきゃ!」って即思いました。
昨晩はItsMeJuvy作のFEEDING DUCKSをプレイしてました。すごくいいゲームです。アヒルを犠牲にせず、一緒に脱出できたので、喜びもひとしおでした。本当、最高でしたね。プレイしててすごく楽しかったです。それと、紹介したいクリエイターがあと2人います。1人はoooDORIENooo。彼が公開したゲームはどれも大好きなので。もう1人はPaulo-Lameiras。ドット絵をベースにしたすごくきれいな作品をたくさん作っていて、すごく興味を引かれています。
私がDreams Universe™の作品を好きなのは、AAA規模ではないからだと思っています。悪く取らないでほしいですし、目を見張るような作品を作る人たちもいますが、私はどちらかというと奇抜で一風変わったものを気に入るタイプなんです。PieceOfCraft、Pixel_Gorilla、Magma-Monsta、Elca_Gamingの4人によるProject Pigeonはものすごく気に入りましたね。ハトが登場するいろいろなミニゲームのセットなんですが、そのハトがかわいいんですよ。いい鳥さんって大好きです。ゲームに出てくる鳥たちって最高ですよね。Dreams Universe™があれば、ひとつのコンセプトに力を注ぎ、無理するのではなく楽しい経験として何かを作れるというところがとても気に入っています。
Dreams Universe™のユーザーガイドはただいま作成中。これからプレイのヒントに関するコンテンツを増やしていく予定なのでチェックをお忘れなく!